俳優のなり方とは!?オーディションから俳優デビューをしたAさんの実体験インタビュー!

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俳優ってどうやってなるの?どんな働き方なの?
多くの人にとって芸能界は、興味はあるけど知らない世界ではないでしょうか?
学生ライターの私にとっても、想像もつかない世界です。

今回は、そんな芸能界で俳優として働くAさんにお話を伺いました。(匿名でお送りします)

地方出身の一般人がいかに俳優への道を歩みだし、何に悩み苦しみ、どうなりたくてあがいているのか、とってもリアルで等身大な、若手俳優の声が聞けました。

心のどこかで芸能界への憧れがある多くの皆さんに、ぜひ読んでいただきたいです。

オーディションから未知の世界へ

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ー俳優を目指したのはいつからですか?

Aさん:なんとなくの憧れは地元にいた頃からずっとありました。でも、なってやるって本気で思っていたわけではなく、なんとなくの夢、みたいな感じでした。当時、月9で 『恋仲』というドラマが本田翼さんと福士蒼汰さんの主演で放送されており、「俳優になったら、こんなかわいい人とキスできるのか、最高だな」って、中高生なら一度は抱くレベルの憧れでしたね。

 

ーオーディションを受けてみたきっかけはなんだったんでしょう。

Aさん:僕は関東の大学に通っていたのですが、 田舎から都会に出てきたので、何か都会っぽいことをやってみようと思ったことが応募のきっかけです。そのオーディションはオンラインで受付をしていたので、書類送るだけだし、優勝したら賞金も出るので軽い気持ちで友達と一緒に応募しました。

好奇心が強いので、知らない芸能界のことを知れて面白そうだなって感じたんです。オーディションを受けること自体が、人に話せる面白い経験になるだろうと思っていました。

 

ーオーディションってどんな感じだったんですか?

Aさん:実はそのオーディション当日の午後に、部活の試合があったんです。試合の集合時間には間に合いそうだったので、せっかくならと会場に向かいました。オーディションで特に何をやるのかもわからなくて、きっと自己PRや芝居をやらされるのだろうから、他の人を参考にしようと思っていました。でも残念なことに、右の方からお願いしますって言われて、僕が最初にやることになってしまったんです(笑)

どうしようと思いながら、とりあえず出身地と年齢と名前を言って、「今もテニスやってるんですけど、中高ではキャプテンとして頑張ってました。元気はいいです!よろしくお願いします」という感じの、簡単な自己紹介で終えました。でも、他の候補者は空手の道着を着て、空手の型をやるので見てください、ロボットダンスができるので見てください、という感じでした。この時にようやく、オーディションがどういうものかわかったんです。自分を見てもらう場だと感じました。

その後控え室に移動させられて、待ち時間がありました。絶対に落ちたと思いましたが、他の人たちがオーディションを受けに来た理由が気になって、緊張感がある部屋の中で、ひとりだけやたらと話しかけてました。

それで、今から言う番号の人だけ残ってくださいってときに、僕の番号がなぜか呼ばれたんです。周りも驚いてましたし、僕自身も驚きました。

 

ーそんな感じなんですね…午後の審査はどうだったんですか?

Aさん:午後の審査では、その場で渡された台本で芝居をして、簡単な自己紹介をもう1度やりました。最初の審査では2人だった面接官が、次の審査では8人ぐらいになっていました。

それまで芝居をしたことは一度もなかったのですが、緊張はしませんでした。午前中の審査で、芝居の経験が豊富な候補者たちも落とされたのを見て、芝居ができなくてもいいんだろうと思っていたからです。芝居経験の有無はもちろん大事ですが、それは後からでも積ませられるからだろうと考えて、ならば、お芝居よりも人間性をアピールした方がいいなと思いながら挑みました。

他の候補者の芝居に比べて、自分はグダグダな芝居だったと思います。その芝居の後は、面接官と普通に会話をして、最後になにかやりたいことがあるか聞かれました。僕は印象を残し、自分の人間性を伝えるために、一発芸をやりました。リアクションとしては、その度胸は認めてやるよ、みたいな感じでしたね(笑)

結果、東京審査にいた100人ぐらいの中から10人、12人ぐらいに残りました。実は自分としても、手応えはあったんです。それは、審査員と1番話した自信と、自分という人間を知ってもらった自信があったからです。東京以外でも予選をやっていたので、総合的に判断した上で、また連絡しますと伝えられて、その日は終わりました。

 

ーその後はどのように審査が進んだのでしょう。

Aさん:2週間後に電話がかかってきて、合宿審査に進めることを伝えられました。合宿審査には12人が参加して、そこで8人が選ばれるとのことでした。3泊4日の合宿でしたが、みんな歳も近かったので楽しいことしかなかったです。合宿中の審査でも、1人5分間好きなことをする自己PRの場がありました。周りは具体的な特技がある人たちだったので、ギターの弾き語りや、ダンス、一人芝居をやっていました。自分にはそういう特技はなかったですが、その中で唯一の大学生だったので、大学生らしいことをしようと考えました。思いついたのがパワーポイントだったので、自分を紹介するスライドをつくって、プレゼンしました。でも、意外とそれがウケていましたね。

 

ー合宿中に心がけていたことはありますか?

Aさん:一緒にいる人たちのなかで、僕が最年長だったので、基本的にみんなに話しかけて、バランサーになろうとしました。みんな若かったので、誰か1人メンタルを崩したりする人が出てくるだろうし、そういう人を支えようと思っていました。そういうコミュニケーションのおかげもあって、いなくなったら困る存在になれた実感があったので、正直に言えば、8人までは残れる自信がありました。実際、みんなが僕に話しかけることから会話が進むことが多くて、それを審査員の人が見ていたから、結局次の審査にも残れました。

 

ー合宿審査楽しそうですね!その後はどうだったんでしょう。

Aさん:次が決勝です。最終面接でもまた自己PRがあって悩みましたが、漫才師を目指してる友達と一緒に3分くらいのネタを考えて、一人漫談をしました。

合宿を通してリーダーシップをとってきたこともあり、僕がトップバッターに指名されて、漫談を披露しました。そこに関係者が200人ぐらいいたのですが、見事にダダ滑りしたんです。リハーサルのときは、みんな笑ってくれたので、一丁前に『間』とかも考えていたのに、ダダ滑りでした。僕が笑わせようと思って喋った言葉で誰も笑わなくて、沈黙が続く地獄の時間になり、結局、グランプリには選ばれませんでした。目の前まで来てた芸能界が、急にまた遠い存在になってしまって、やりきれなさがありました。 

でも、それから2ヶ月ぐらいして、電話がかかってきて、実はオーディションを見て興味があるんだけどって決勝を見に来ていた方から声を掛けていただいたんです。それで事務所に行ったら、あんな早口で、面白くない話を3分間やった度胸がいいね、うちの会社来ないって誘われて、芸能界に入ることが決まりました。

 

ー即決だったんですね。それはどうしてですか?

Aさん:誰もがなれる仕事ではない俳優になれるということとオーディションが終わってから正直やりきれない気持ちだったからです。とりあえず1年ぐらいやってみてから辞めてもいいし、やらない方が後悔すると思って決めました。それが大学2年生の終わり頃で、3月末に入社して、6月にドラマデビューしました。そうして今の活動に至ります。

 

ー俳優になると伝えたとき、周りの反応はどうでしたか?

Aさん:親には驚かれましたが、応援してくれて、一般招待ができた決勝には、わざわざ見に来てくれました。ダダ滑りした漫談も、両親だけは笑っていましたね(笑)

 

ー大学生を続けながら、俳優として活動することになったんですよね。何か変わりましたか?

Aさん:仕事が少しずつ入り始めて、出席しないといけない講義に出れないことや、テスト期間に勉強時間が確保できないことは大変でした。でも、部活を引退する4年生になったら遊ぼうと決めていて、4年生には授業をあまり取らなくていいように履修を組んでいたんです。おかげで、後半は両立がそれほど大変ではなかったです。

部活に関しては、プレイヤーは2年の終わりで引退して、サポートする側になりました。ですが、部活に参加できる時間は限られてしまいましたし、見ると参加したくもなるので、試合や練習にもあまり行きませんでしたね。運営側としては、地元の商店街の夏祭りに部活として出店する企画を立てたこともありました。当日は仕事が入っていけなくなってしまったのですが、商店街のみなさんに気に入ってもらえて、翌年も呼んでもらえました。

 

俳優は、多くの人の記憶の中で生き続ける

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ー俳優ってどんな働き方なんでしょう?

Aさん:僕ぐらいのレベルだと、翌日の予定もわかりません。マネージャーさんも仕事が確定するまでは伝えないので、オーディションや撮影の予定が、前日に急に入ることもあります。でも断るのはチャンスを潰すことになってしまうので、基本的には断らないでいいように他のスケジュールを立てています。最初は困惑したものの、今ではそれに対応したフレキシブルな私生活に変わっています。

 

ーその生活を不満に思うことはないんですか?

Aさん:全くないですね。機会をいただかないと僕らは仕事ができないですし、仕事がないと上にも行けません。僕らは仕事が欲しい側の人間なので、プライベートを犠牲にしてでも、仕事をさせてくれって思いの方が強いです。
仕事をしていないと俳優を名乗れないですし、お芝居をしている時間って楽しいですからね。

 

ーお仕事をしていて楽しいのはどんなときですか?

Aさん:僕にしかできないお芝居を探しているときですね。
もちろん、違う人が同じ役をやることはできますが、役の魅せ方は演じる人によって変わってきて、僕にしかできないその役の形があるんです。ムロツヨシさんと山崎賢人さんが演じるのでは、たとえ同じ役であっても全然印象が違いますよね。やっぱり、その人自身の個性がすごく出てくるお仕事なんだと思います。

だから、僕にしかできないお芝居がしたいですし、どういう風にアプローチすれば僕らしさが出るか、考えている時間が楽しいです。考えすぎだと指摘されることもあるのですが、それが現場で認めてもらえたときは嬉しいですね。

 

ー俳優という職業の魅力ってなんでしょう。

Aさん:俳優は娯楽に携わっているわけですが、娯楽って、なくても世界は回ります。本を書く人や映画を作る人がいなくても、食べ物とか最低限のものがあれば世界は回り続けるので、言ってしまえば必要とされてないものを作っているに過ぎません。でも、大勢の人たちが、本気で作品を作り上げているんです。やっぱりそうやってできた作品は面白いですし、見た人たちがいろんなことを感じてくれるわけです。そういう作品に、登場人物の1人として関われるって、すごいことですよね。見た人から、元気になりましたとか、勇気づけられましたとか、そういう反応をもらえると嬉しいですし、僕が出演した作品が誰かの人生を変える可能性もあるわけで、すごく素敵な仕事だと思っています。

 

ー人の人生に関わりたいってことでしょうか。

Aさん:実は僕、もともと教師になりたかったんです。僕自身、いい先生のことは今も頭に残っていて、変な考え方かもしれませんが、そうして誰かの記憶に残っている間は、その人はずっと生き続けられると思っています。そう考えたときに、教師になれば自分の生きた証が残せるように思えて、魅力を感じていました。でも、俳優が職業として見えてきたときに、俳優だったらもっと沢山の人の記憶に残れるなって思ったんです。

 

ー俳優をやっていて、不安に感じることはないんですか?

Aさん:よくありますよ、部活の同期を見ていると、みんないい会社に就職して、確実にステップアップもしていて、自分も芸能界に入らずに普通に大学生活を続けていたらどうなっていただろうとも思います。夢を追いかけている間はどうしても不安はあります。でも、だからこそ、この選択に後悔がないようにしたいです。

 

ー演技ってどうやって磨いていくものなんでしょう。

Aさん:初めは何もわからなかったので、いろいろやりました。書籍でも勉強しましたし、監督やプロデューサーの方が演技指導をするワークショップにも参加しました。いい演技って答えがなくて、それぞれの思っているものが答えになるんです。演技の勉強をしていくうちに、もっと知りたいな面白いな、と演技自体の面白さと奥深さを一層感じています。

また、知らない所にもどんどん飛び込んで、色々な経験を積むようにもしています。自分の得たものからしか芝居はできないので、新たな環境の中で感じたものを大切にしていきたいと思っています。例えば経験しようのない、人を殺すといった芝居にしても、殺人を犯してしまった人の手記を読んだり、小説を読んだり、そうしていろんな人たちの経験を摂取して、自分なりに解釈したうえででないと、自分の気持ちとして表現できません。なので、ある意味では24時間いつでも勉強できるし、お仕事なんですよね。

 

俳優として、役について誰よりも詳しくなる

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ー俳優として大切にしていることはありますか?

Aさん:僕は、自分が演じる役について誰よりも詳しくなければならないと思っています。例えば、朝学校に登校してきて「おはようございます」と挨拶するシーンがあったとします。そのときの「おはようございます」って、朝ごはんに何を食べたのか、電車で来たのか走ってきたのか、天気は晴れなのか曇りなのか、それはその子にとってどうなのか、とか、全てを総合したうえでの挨拶なわけです。もしそれが雨の中、ずぶ濡れになりながら自転車で登校してきたときの挨拶なら、本当は帰りたくて仕方ないようなテンションになりますし、今日好きな子に告白しようと決めてきた日の朝なら、全く違うトーンになりますよね。そういう台本に書かれてない部分を想像して、演じる役の人生を埋めてあげなきゃいけないと思っています。1つのセリフでもいろんな考え方ができるので、それを考えるのがすごく楽しいですね。

あとは、脚本家さんや、監督やプロデューサーさん、マネジャーさんがいないと自分は仕事ができないので、常にいろんな人に感謝しながら仕事をしていますね。この業界って人と人との繋がりで仕事をすることがすごく多いので、感謝の心は忘れてはいけないなと思います。

 

ー俳優に憧れをもつ人は多いと思います。向いているのはどんな人だと思いますか?

Aさん:まず、この仕事が好きじゃないとできません。そのうえで、これは一概には言えませんが、何か自分に対してコンプレックスを持ってる人は強いと思います。個人的な感覚ですが役者さんって、順風満帆な人生を送ってきた自信満々な人より、何か自分に劣等感があったり、見返してやるって気持ちがある人が多いんですよ。ずっと勝者でいるような天才はほんの一部で、初めは自信があったとしても、仕事をしていくうちに周りの人に圧倒されて、まだまだだなって劣等感を持ちます。でも、そこからがスタートだと思います。芝居は自分の経験の中でしかできないので、そういうネガティブな思いがあることも芝居に活きてきたりもします。

 

ー今後の目標を教えてください。

Aさん:まずはこの仕事をずっと続けていきたいので、売れなきゃいけないですよね。
その中でもやりたいことの1つは、映画で主演を張ることです。スクリーンで見る自分って最高で、超気持ちいいんですよ。自分を見に来たわけではなくとも、 映画を見に来た何百人もの人が見てるスクリーンの中で、自分の顔がバーンって抜かれる快感は最高です。

 

ー俳優として伸ばしたい・つけたい力はありますか?

Aさん:俳優は作品や役に応じて、幅広いスキルや知識が求められます。例えば、英語やアクション、乗馬など、持つべきスキルは様々です。僕はもともとスポーツを続けてきたので、今はアクションを学びたいと思っています。自分が芝居をするときは、なるべくスタントの方に頼らずに演じ切りたいですし、自分の武器を一つ持つ意味でも、アクションは勉強したいです。

 

ー演じてみたい役はありますか?

Aさん:もちろん今は、なんでもやりたいってことが大前提にありますが、キャラクターが濃い役はやっていて楽しいです。絶対にできない経験ができたり、今の自分の人生とは全く違うけれど、実はそういう人生だった可能性はあるわけで、そういうことを考えるとこの仕事の面白さを実感しますね。

 

ー人としてどんな人になりたいという目標などはありますか?

Aさん:今の僕には役者としての課題も、人間としての課題も多いですが、人を惹きつけられる人間になりたいとは思います。
活躍されている役者さんって、目がすごくいいんですよ。何がいいかと言われると、言語化できないのですが、持ってる人の目って何か違っていて、見ていて感じるものがあるんですよね。そういう人は何か自分の確固たる目標を持っていて、芯があるから惹きつけられるんだと思います。もちろん僕も目標を持ってやってるつもりなので、なりたいと思ってなれるものなのかはわからないですが、人を惹きつける人になりたいですね。

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今回は、若手俳優のAさんにお話を伺いました。

ある意味身近でありながら縁はない不思議な世界、芸能界。
きらびやかなイメージがある俳優という職業ですが、厳しい世界を生き抜くために、深く考え、悩んでいる等身大の人間がみえてきました。

エンターテイメントは必要なのか、コロナ禍において何度も問い直されてきましたね。
皆さんはどう考えますか?
今回の取材が、改めて考える材料になれば幸いです。

 

shabellbaseでは今後も多種多様なキャリアを築く方々を紹介しています。

あなたの夢探しやライフプランに役立つヒントを見つけてみてください!