「なりたいがなければ、『なりたくない』を考ればいい」 自分を常識から解放する生き方とは?

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人生は選択の連続である、と良くいうものですが、実際にどんな選択をすれば未来の自分を幸せにすることができるのでしょうか?

選択をするその瞬間や選び方にはどんな判断軸をもっておくべきなのか、学生時代から自分らしい人生づくりに取り組む、株式会社日本提携支援で代表取締役を務められている大野駿介さんにお話を伺いました。

大野 駿介さん
おおの しゅんすけ|経営者
株式会社日本提携支援 代表取締役。学生時代にサンフランシスコ内の企業やラクスルやスマートキャンプなど複数の国内スタートアップ企業にてウェブデザイナー等のインターンシップを経験。 新卒として株式会社日本M&Aセンターに入社。 2021年3月、独立し創業。プライベートでは、奥様と愛犬と過ごす時間が癒やしのひととき。

 

M&A業界のモヤモヤ解消のために自ら起業

ーまずはじめに現在経営されている「株式会社日本提携支援」の事業内容について教えて頂けますか? 

大野駿介さん:みなさんがイメージをしやすいもので例えると、ほけんの窓口のM&Aバージョンみたいなものです。つまり、当社でM&Aの実務を行っている訳ではないのです。経営者が自分の会社を譲渡したいと思った時に、まず全国で600社ほどあるM&Aの仲介業者を頼ることになります。

ちなみに、M&Aを支援できる企業は大体3000社ほど存在しています。M&Aを支援する事業者には、売り手と買い手をそれぞれ探してマッチングさせたり、企業価値を査定したりなど、それぞれ企業ごとに役割が異なります。

そんな中で、当社は全国60社ほどのM&A支援企業と提携し、自身の企業を譲渡したいと考えた時に、適切なM&A支援が受けられるように企業の選定や紹介を行っています

M&A支援業者は増加する一方で、自社にマッチしたM&A支援業者を探したり、どこに依頼すべきかの相談ができる企業はまだ少なく、これからさらにニーズが増えていく役割だと考えています。

nihonM&Acenter,M&A

30代という若さでM&Aに関する事業で起業する、というのが非常に特徴的だなと感じたのですが、なぜその事業で起業されるに至ったのでしょうか?

大野駿介さん:新卒で入社したのが日本M&Aセンターという国内大手のM&A仲介企業だったのですが、M&A仲介を引き受ける際に、着手金かつ成果報酬が高い条件に設定されていたんです。実際ご相談を受ける企業は、従業員5名程度の企業なども多く、その規模だと株価もなかなか付きづらく、その条件だとお手伝いできないとお断りせざるを得ないケースが頻発していました。

一方で、私自身はM&Aの仲介支援を求める経営者をご紹介頂く立場でもあり、ご紹介頂いたにも関わらずお役に立てないことが非常に歯痒かったんです。もちろん世の中には手数料の安い事業者もあったのですが、自分の立場やその事業者との連携を取ることが本業の傍ら難しいことなどから、いずれにしても相手の期待には応えきれませんでした。

そんなモヤモヤを解消する術を模索している中で、全国のM&A支援企業の経営陣や幹部クラスに先輩や元同僚がおり、手頃な手数料で引き受けてくれる事業者と直接繋がっていることを改めて認識したり。
自分自身もM&Aをご依頼いただく件数で全社1位になった実績があることから、入口の話を聞くのが得意であることに気づいたり。

学生時代の経験からWebやITの分野に知見があったので、今オフラインで行われている事業にオンラインを掛け合わせるイメージもわりとすぐについたりして。さらにM&Aの入口部分だけに特化することで、自分なら日本全国の中でも一番よいサービスが提供できるんじゃないかと、この事業ならいけると感じて起業するに至りました。

 

留学、起業、失敗…M&Aとの出会い

ーもどかしさから生み出された事業内容なんですね。ちなみに、元々起業したいという想いや起業する未来を思い描いたりしていたのですか?

大野駿介さん:現在の会社は先述のとおり、この事業なら起業できると感じたのがきっかけなんですが、最初に起業を思い立ったのは学生の頃でした。大学3年生の時に休学をしてサンフランシスコに1年留学をしていたんですが、帰国したタイミングで当時の留学仲間と一緒に起業しようという流れになって、起業もどきをしたことがあったんです。

東大のスーパーエンジニアの薦めで「駿介社長やってみてよ」という感じで、社長をやってはみたものの、実際には2ヶ月でアイディアも資金も尽きて、営業もできずで終わってしまいましたその時は、失恋したとき以上に胸にポッカリ穴が空いたような気持ちになってしまったんです。それまでは、起業かっこいいなとか、やりたいことも特にないけど、社長やってみてよと言われたから、まあやってみるかという感じでいたんですが、正直二度とこういう想いはしたくないなと思いましたね。

SiliconValley,internship

 

当時の起業経験では、悔しいというか虚しい想いをされたんですね。そこから、どのようにして就職するに至ったのでしょう?

大野駿介さん:留学先に選んだサンフランシスコにはシリコンバレーというITの聖地がありまして、友達に「ただでビールが飲めるらしいから行ってみようぜ」と誘われて行った先がAirbnb本社で開催されているエンジニアの採用イベントだったんです。

お菓子やお酒が目的ではあったんですが、話を聞いてみると空きスペースをテクノロジーの力でホテルにするみたいな内容で、「何だそれ、ITってめっちゃ面白いじゃん」と衝撃を受けたんです
留学先では、ベンチャーキャピタルや地元のデザイン会社でボランティアシップ(無償のインターンシップ)を経験したのですが、帰国後やはりITの領域への興味が捨てられず、どこかで経験を積めないかと考えたんです。いろいろ探して、結局Webデザイナーのインターンやスタートアップ期のベンチャーで事業の立ち上げなどを経験することができました。
就活でもWebベンチャー数社から内定を頂いたりしたんですが、なかなか行きたいなと思える企業に出会えずにいました。そんな中、逆求人サイト経由で日本M&Aセンターの社長と出会い、ほぼ内定のような状態まで一気に話が進んだんです。

 

留学先のシリコンバレーで、日々新たなサービスや事業が生み出されるのを目の当たりにしていたから、想像がつきそうな企業には興味を見いだせなかったんですかね。

大野駿介さん:もちろんそれもありました。でも一番は新卒の切符を切るならココしか無いかもと感じたのが決め手ですかね。
内定先のWebベンチャー企業は成長過程にあったため、中途入社で人が増えていました。一方で、日本M&Aセンターは、銀行とか証券会社のトップセールスでないと中途で採用されない厳しい基準がありました。加えて、若手の裁量権も多く、高年収、会社の財政面も安定していて、成長している企業だったので、当時の企業選びの軸とも合致していました。

そればかりか、学生時代にM&Aの経験を積みたいから、バックパックでアジアを周る自分に裁量権を与えて欲しいという私の要望を受け入れてくれて、内定期間中からそれらを実感することができていました。元々はM&A領域に興味があったわけでも無かったし、ITでの経験も目指していたというよりもサンフランシスコでシリコンバレーに迷い込んだ影響という感じで、自分としては意図せずそこにたどり着いたという印象です。

 

自力で人生を充実させる行動は、選べる

ー意図せずと言いつつも、その場その場で得られるものを得きるんだ、充実させるためには努力を惜しまないぞという、覚悟みたいなものを感じます。原動力は何なのでしょう?

大野駿介さん:たしかにそうかもしれません。ただ、幼い頃からそうだったわけではないんです。小・中と野球をやっていたんですが、小学校では地区選抜に選ばれるぐらいだったのが、中学校になると3年間1度もレギュラーに選ばれずに卒業してしまって。高校にも野球部はあったんですが、強豪校だったのであえてそこには入らず、ハンドボール部に入部しました。
ところが、なぜかその年に限って過去最多の入部数で、ここでもまたレギュラー争いすることになり、部活を辞めることも一瞬頭によぎったんですが、それじゃまた中学の時と同じことになると思い直して、めちゃくちゃ頑張ってみたんです。そしたら、いつの間にかスポーツ選抜で入学したライバルを抜いてレギュラーになれたんです。

その経験から、頑張ったら結果でちゃんと出るんだって思えるようになって、大学に入学したあとも自分でサークルを作ったり、留学行ってみたり、「自分の行動次第で楽しめるかどうかが変わる、人生変わるんだ」って考えるようになりました。

SiliconValley,internship


ー頑張ったら結果が変わる、と分かっていてもなかなかやりきれない人の方が多いと思いますが、大野さんの場合、中学ではそれができず、高校では変わりましたよね。それはなぜでしょう?

大野駿介さんコンプレックスが大きいと思います。それまで順調だった自分が中学になって急に、レギュラーになれなかったことによって、なりたくない自分になってしまった。今もそうですが、なりたい自分が明確にあるというよりも、なりたくない自分にならないようにするためにどうすればいいかを考えるようにしてます

高校では中学の自分のようにならないためにはどうすればいいかを考え、そこから先の人生でも「この環境にいるのならこうはなりたくないよね」と考えて、なりたくない姿の逆張りを行くようにしてきました。特に留学の経験は大きくて、それまで日本とか地元とか大学とかその内々の常識の中でこうあるべきと判断していたことが、アメリカの常識とも違うし、そこにいる他の日本人のそれとも実は違ったりする。

こうならなきゃいけないってものは、すごく小さな世界の狭い領域で生まれたもので、そこに縛られるのは違うんじゃないかという思考がより強くなりました。

実際今、母校の大学でキャリアに関する講座も受け持っているのですが、なりたいものがないと話す学生でも、なりたくない自分みたいなのはちゃんと出てくるんですよね。

 

自分の当たり前を疑うことって、できそうで意外と難しいですよね。大野さんのように留学など特別な経験以外で、価値観転換を起こすためにはどうしたらいいですか?

大野駿介さん:環境を変え続けるってのが一番大事かなと思います。例えば、アルバイトでもいいし、一緒にいる友だちや仲間の輪でも良いのですが、同じコミュニティの中にいるとその中の価値観に囚われるようになってしまいます。
ここに飛び込んだら正解という環境があるわけでもなくって、アルバイト先やクラスで全然喋ったことない人と話したり、やったことないことに挑戦してみたり。何か動かないといけないと感じるのであれば、これまで触れたことがない価値観の数が重要だと思うので、コミュニティや環境を変え続けることをオススメします。

一方で、無理する必要もないとも思うんです。今の環境が楽しいと感じるのであれば、そこでとことん楽しみ尽くすのはすごく大事かなと思っていて、とにかくそこでできることを突き詰めていくほうが得られるもののレベルは上げられる
その方が、次の環境に行った時に掛け合わせられる価値観やスキルが増えているはずなので、強いんじゃないかと思います。

いずれにしてもどうやって今の環境と向き合うかですね。

ゆるっといるんじゃなくて、変えるか極めるか、どちらかではないかなと思います

 

すべての人と企業に最適な選択と支援者がある社会へ

ー大野さんが個人として大切にされている考えだけでなく、経営者としての考えも教えて頂けますか?

大野駿介さん:もちろん、メンバーに対してもなりたい姿やwillだけでなく、will notを引き出せるようにコミュニケーションをとっています。ぱっと名言できないメンバーに対しても、現状の先にある姿を解説してあげて、それがその人にとって、willなのかwill notなのか判断ができるように導くこともあります。

その上で、個人の能力とやりたいこと、やりたくないことのバランスを組織としてどうやって取っていくのか常に考えています
成果を最大化していくために頭を使うのが経営者の仕事だと思うので、私自身が色んなことができなければいけないなと思っています。

自分自身が組織の壁になってはいけないので、いろんな経営者の方や先輩たちにアドバイスもらいながら、取り組みの優先順位をつけたり、戦略を立てたりしています。

経営者であることの面白さは、自分がやりたいと掲げたことに対して、戦略を考えてどう実現させるか組み立てるだけじゃなく、そのやりたいことをどんどん広げていけることにあると思います

戦略を深堀りしていくことも、展開領域を拡大していくことも自分次第で際限なく広げることができます。

これは経営者になるという選択をしなければ、経験できなかったことだなと思います。

 

ーM&Aって跡継ぎ問題の解消や労働環境の適正化、生産性の向上など、課題が善処する場面も多いと思うのですが、どうしたらM&Aが適切に機能する社会になると思いますか?

大野駿介さん我々としては相談窓口の課題が大きいと考えています。適切な情報を提供できる人が、経営者の身近にいないんですよね。

銀行さんとか、税理士事務所の担当者とかも相談に乗れますよと言うんですが、事例を知らないことが多いんです。
企業価値はどうとか、業界がどうとかいう話はできると思うんですが、具体的にM&Aできる可能性があるかどうか情報を交えて話してあげることができないんです。勉強会を定期的に開催したりもしているんですが、そもそもこの相談はいつ、どこに何から相談したら良いのかわからないということ自体が課題でもあって。

経営者がGoogleで検索したりするときには、すでに赤字で債務超過で助けてほしいと思ってもすでに手遅れなんていう状態に陥ります。

経営者の近くにいる人がちゃんと提案ができたりとか、相談ができたりするような世界になったらいいなと思ってやってるところもあるので、事業承継などの課題解決法として有効であるM&Aが身近になるためには、この情報の穴を埋めていけることにあるのかなと思っています

 

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ー最後に、大野さんご自身のパーソナルな、目指したい自分の未来について教えて頂けますか。

大野駿介さん将来は教育とかをやりたくて。40歳でも50歳でもいいんですけど、ゼミの先生が結構好きだったんです。学生時代は環境や畜産系を専攻して、ブルームバーグとかロイターとかデロイトとかで経験を積んだり、ライブドアニュースの立ち上げに携わったりした方で、出会ったことがない大人が先生だったんですよね。そういった感じで引き出しの多い先生だったので、何か挑戦しようと思った時には必ず応援してくれて、今でもよい関係でいてくれるんです。

だから、私もそういう大人になっていきたいなと思ったときに、普通に働いているだけじゃ経験できないことをもっと経験していきたいなと感じています
もちろん、その経験を驕(おご)るとかでもなく、その先生が自分にしてくれたように、良き相談相手になること、よき支援者になれることを目指していきたいなと思っています。

 

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大野さんとのお話の中で、インターン生でテレアポ獲得ですごく成果を出している方が、見た目がノリの良い営業タイプではなく、就活で実績を披露する機会すら得られないという相談がありました。
これって、弊社が新サービス「しゃべりお」で解決しようとしている課題だなと、深く共感しました。
自分が環境や出会った人から受けた良い影響を周囲の人に還元することだけでなく、正しい情報や機会を提供することがどれだけ大切なことなのか、事業だけでなく人生を通じて体現することが大野さんらしさなんだろうなと感じました。