「働く目的」を探求し続ける起業家!與良だいちさんのキャリアに迫る

與良だいち

「独立したいけど、なかなか踏ん切りがつかない……」
「起業するのが夢だけど、どんなタイミングで起業するのが良いんだろう」

独立や起業を考えている人の中には、さまざまな事情や思いからその一歩をなかなか踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
それはきっと、先輩起業家も同じはず。彼らがどのようにして経営の道を歩み始めたのか、どんな思いがあったのか聞いてみたいですよね。

そこで今回は、これまでに5社を立ち上げた経験を持つ與良だいちさんに取材。

起業する前の経歴や、起業するきっかけ、実際に起業した後のあれこれを伺いました!
與良さんの興味深いエピソードから見えてきた、仕事との向き合い方についてお伝えします。

 

20代では商社の経理や外資系企業の戦略コンサルタントとして勤務。30代から組織開発にも携わるように

養鶏場の前でピースをする與良だいちと社員

まず、起業までのご経歴について伺います。起業する前はどんなお仕事に携わっていたのでしょうか。

與良だいちさん:大学卒業後、海外を飛び回って活躍するような営業になりたくて伊藤忠商事株式会社に入社しました。しかし、いざ入社してみると配属先は経理部でした。「営業部に行きたい」と何度も上司にかけあったり、簿記1級まで2年間で取得してやる気を示したんですが、それでも営業への異動は叶わなくて。それならしょうがないと思い、転職活動を始めました。
24〜25歳で1回目の転職。転職するのであればゼロからコンサルティングを学びたいと思い、アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)に入社しました。


簿記資格や経理経験が評価され、入社してすぐに会計システムの案件にアサインされましたが、そこではどちらかというとプログラマーのような仕事が多かったですね。もう少しコンサルティング寄りの仕事がしたいという思いから入社して1年で社内異動リクエストを出し、経営やマーケティングに関わる戦略グループに異動することができまして。戦略コンサルタントとして4年目まで働きました。

 

そこから、與良さんの経営戦略のコンサルティングのキャリアにつながっていくんですね。

與良だいちさん:そうですね。ここにきてようやく、自分がしたい仕事ができているという実感が持てました。20代後半で「経営とは何か?」「仕事とはなにか?」ということを自分なりに考えるようになったのは大きかったですね。この時期はとにかく夢中になって働いていて、今振り返ってもものすごく成長できたと思っています。

そうしていくうちに、実業面をもっとやってみたいと思うようになり、29歳のときに再転職。次の転職先は、IT会社の経営企画職でした。従業員数が100名弱だったので、手触り感がありましたね。中でも僕は、組織人材マネジメントにフォーカスして、強い組織作りに注力しました。

その経験を通して、30歳ぐらいのときに企業は人が全てと気付きました。どんなに会社トップのビジョンが素晴らしくても、現場の社員一人ひとりがそれに邁進できるような環境がないと組織として強くなれないし、やる気のある人たちが力を発揮して活躍できる企業風土がないとダメだと実感したんです。

35歳のとき、組織開発や組織コンサルとしてよりいろんな会社を見ていきたいと思い、組織風土開発のコンサルティング会社に転職。「強い組織を作るには?」という視点に対話を取り込むことでチームビルディングのコンサルティングをしたりして、ワークショップやファシリテーションの走りのような動きを2009年頃からやっていましたね。

 

起業のきっかけは2011年の震災。「なんのために生きるのか」の答えを持たない人々に危機感

新卒から30代半ばまで会社員生活を続けこられた與良さんですが、起業しようという転機が訪れたのはいつですか?

與良だいちさん:2011年の東日本大震災がきっかけです。このとき、「今自分にできることってなんだろう」と改めて考えたんです。企業の風土改革をしていく中で、何のために働いているかを考えていない人の多さに問題意識は抱いていました。そういった意識では組織はなかなか強くなれません。一方で目的を持って動いている人たちは辛いことをチャンスに変えていける

震災が起きたことで、一人ひとりが何のために生きるのかを本気で考える社会にしないとまずいんじゃないかと思いました。社会に出る前の学生にそれを考えるきっかけを作りたい。

そこで、社会人として経験を積んだ30代前半の人たち×学生で「働く目的」について話せる場を設けました。それが「ハタモク」です。

 

震災が契機となって、学生と社会人をつなぐコミュニティが生まれたんですね。

與良だいちさん:はい。ハタモクはそのコンセプトが共感を生んで、全国10箇所、3年間で1万人くらいの人が参加するまでに発展しました。ただ、この活動ではなかなかマネタイズすることができません。最初はパラレルワークでやっていたもののそろそろ本業で手掛けていきたいと思うよになり、「目的を持つと生き方が変わる」という信念のもと、2013年に「株式会社もくてき」を立ち上げました。

しかし自分一人のコンサルに限界を感じ始めたこともあり、次は「目的を問うチーム」を作ることに。コーチングやカウンセリングを学んだ人たちに声をかけて組織化して、企業の中で頑張る人の目的創造と実現を応援しサポートするクラウドサービス「YeLL」を始めたという経緯です。今はそれぞれのサービスから離れていますが、そうして一つひとつ目的を持って取り組んできましたね。

 

 

與良さんの起業は「目的を見つける支援がしたい」という思いが共通している

販売活動をする與良だいち

與良さん自身は「働く目的」についてどう捉えられていますか?

與良だいちさん:働く目的」は常に変わり続けるものだと思っています。経験によってどんどん進化していきますし。ただし考え続けることが大事で、常に自分に問いかけ続けて、行動とともに作り込み続けていく必要があると思います。

一方で「問いかけ続ける」ということって、学生や若手はなかなか一人でできるものではないとも思います。だからこそ「shabell」に共感し、シャベラーとして参画することにしました。

 

與良さんがこれまで起業してきたそれぞれ根本の動機は、自分自身が目的を持って働くところに関わりたかったからでしょうか。

與良だいちさん:そうとも言い切れないです。結果としてそうなっているかもしれませんが、たとえばハタモクという対話の場を作ったのも、僕が根っからのコンサル気質だったから。人の目的実現を支援したいっていう気持ちが大きいんです。
たとえば今、メガネ事業や養鶏事業、飲食といったバラバラの事業支援に携わっていますが、いずれも相手の目的や夢を知って、良いと思った人や事業に対して自分の強みを最大限活かしたサポートがしたいと強く思ったんです。

 

 

起業は波乱万丈。大きな失敗も財産として振り返れるように

実際にいくつかの会社を起業されてみて大変だったことなどを教えてください。

與良だいちさん:いや、波乱万丈しかなかったですよ。借金を1億円くらい背負いそうになったり、無職になったりもしましたから。ほかの人にはなかなかお勧めできないようなこともたくさんありましたし、心も身体も壊して動けなくなったこともあります。
大きな額の赤字が続いて自己破産寸前。そんなときに限って仕事でも大きなトラブルに見舞われて、本当にどん底の時期がありました。資金繰りのプレッシャーと、事業が想定通りに動かないことへの焦りや不安。一人でやっていたわけではありませんでしたが、大変でしたね。

振り返れば、今となってはその経験も財産だといえますが。

 

 

「3つの自由」を得ることこそが起業の醍醐味であると実感

笑う與良だいち

起業の困難や失敗についてお話を伺いましたが、一方で起業することの醍醐味について教えてください。

與良だいちさん:大変なことばかりお話しましたが、大きな困難な経験を経ても僕はやはり「起業して良かった」と思っています。以前「独立することは3つの自由を得ることだ」と教えてもらったことがありました。
3つの自由とは、

1つ目が「行動の自由」。自分のやりたいことだけをやれること。
2つ目は「人間関係の自由」。好きな人とだけ仕事ができること。
3つ目に「経済的自由」。使いたいものにだけお金を使えばいいということ。

そういった自由を手に入れられることが起業の醍醐味だと先輩に教えてもらい、今はそれができているので、すごく良い状態になっていますね。自分が勉強したいと思ったらそこに投資すればいいし、無駄なものはすぐ削減できるし、自分の意志で全部決められる。とても自由ですね。

 

 

挑戦とはリスクも受け入れる覚悟を持つということ。失敗を悪と思わず準備することが大事

起業を考える若手に対してアドバイスをお願いします。

與良だいちさん:やらないで後悔するぐらいならやった方が良い”と伝えたいですね。
「やる」ということは、何が起きても現実を受け止める覚悟を持っておく必要があるんです。事業を始めようとしたらびっくりするくらいいろんなことに翻弄されるかもしれませんが、リスクに対して準備したり、実際に対応していくことが大事だと思います。

それに、1発目からうまくいくことなんてそうそうないですよ!僕も何社か起業しましたが、1回目より2回目、2回目より3回目のほうが確実にうまくやれていると思います。失敗したらそれを活かしてまた始めればいいんだから、もっと気楽に、肩の力を抜いてやってもいいんじゃないかな。失敗したら終わりじゃないので、自分次第でチャンスは作っていけるはずです。

ポーズを決める與良だいち

與良だいちさん
よら だいち|経営者


早稲田大学高等学院(アメフト部)、早稲田大学卒業後、総合商社や外資系コンサル、IT会社などを経験した後、東日本大震災をきっかけに独立を決意し、現在までに何のために生きるを本気で考えることを課題とし、一つ一つに明確な目的をもって5社を起業し、経営してきた。
HP:https://haconiwa.co.jp

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